ZWO社ASI290MCを用いた月面拡大写真のコツ(RegiStax6による画像処理編)

デジタルカメラの進歩は留まりませんね。天体写真専用のCMOSカメラも一段とコストパフォーマンスの良い製品が登場してきました。手軽な価格帯の1/3インチサイズから、超高価な最新の画像素子を採用したフルサイズまで、ラインナップの充実ぶりも凄いです。
今回、月面撮影を目的としてZWO社のASI290MCを購入しました。
この機種は、現在、価格も4万円を切り、惑星撮影、月面拡大撮影を目的とする天体写真愛好家に大変人気があります。
大変ノイズが少ない画像を吐き出し、発熱も抑えられているので長時間の撮影が可能です。
まずは、今回撮影して、RegiStax6にて画画像処理を施した月面画像を見てください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




















今まで接眼レンズを用いた拡大撮影法にて、月面拡大撮影に挑戦してきましたが、これほどのクリアな仕上がりにはなりませんでした。

もちろん、気象条件、特に上空の大気の条件が大きく左右しますので、常にこの結果が得れる保証はありませんが、ファーストショットに近い条件で今回の撮影結果には、大変満足しています。
ということで、今回撮影を行ったプロセスというか、コツについて備忘録として記します。

使用したCMOSカメラASI290MCの主要スペックは次のとおりです。
 ・CMOSセンサー:ソニー製 1/2.8インチ カラーセンサー
 ・素子解像度:1936×1096ピクセル
 ・露出時間:32マイクロ秒()~2000秒
 ・ビットレート:12ビット出力(12bitADC)
 ・インターフェース:USB3.0/USB2.0
 ・オートガイド対応:有(SSAG、ST-4互換)

 

 

 

 






ASI290MCは、撮影用途としては、センサーサイズが約1/3インチで、私が使用しているAPS-Cデジタル一眼レフに比較して面積が小さいことで拡大撮影に向いたカメラです。メーカーとしても惑星や月面撮影用として販売しています。CMOSカメラは、PCに接続して使用します。推奨ソフトウエアは「SharpCap」添付されていて、今回の撮影ではこれを利用しています。













設定などの撮影データは、テキストファイルとして画像データとは別に記録されます。

今回説明に利用する画像の撮影データは、下記のとおりです。
[ZWO ASI290MC]
Pan=8
Tilt=8
Output Format=AVI files (*.avi)
Binning=1
Capture Area=1920×1080
Colour Space=RGB24
Temperature=25.1
High Speed Mode=On
Turbo USB=100
Flip=None
Frame Rate Limit=60 fps
Gain=0
Exposure=0.04
Timestamp Frames=Off
White Bal (B)=95
White Bal (R)=52
Brightness=1
Auto Exp Max Gain=300
Auto Exp Max Exp M S=30000
Auto Exp Target Brightness=100
Mono Bin=Off
Banding Threshold=35
Banding Suppression=0
Apply Flat=None
Subtract Dark=None
#Black Point
Display Black Point=0
#MidTone Point
Display MidTone Point=0.5
#White Point
Display White Point=1
TimeStamp=2020-05-02T12:39:29.0924337Z
SharpCapVersion=3.2.6248.0
また、使用した望遠鏡は、高橋製作所製MT-160で、コレクターを装着して合計焦点距離は、1330mmとなっています。

では撮影したこのAVI形式の動画ファイルを用いて画像処理を行ってみます。
使用ソフトウエアは、RegiStax6を使用します。
RegiStaxは、動画を構成する静止画画像を位置合わせしながら、数百枚レベルでスタックして高品位画像を生成することができる素晴らしいソフトウエアーです。このソフトウエアの登場でアマチュア写真家でも、まるでアポロ宇宙船から撮影した月面写真のような高精細な写真を出力することが可能となりました。
Registaxは、大きく二つに分けで、「動画から静止画を生成するスタック機能」、「強力な数値計算による画像精細化機能」のモードがあります。
AVI形式の動画ファイルから強力なスタック機能で静止画を作り出し、最後に強力な精細化機能にかけるといった手順です。










起動直後の画面です。
左上にある「Select」をクリックして対象ファイルを読み込みます。
今回SarpCapを使用して撮影した動画の一つを処理してみます。
AVI形式のフルハイビジョンサイズ(1920×1080)で4.36GBあります。


























対象動画ファイルが、プレビューウインドウに表示されます。

下段には、対象動画ファイルのフレーム数が表示されています。(753 frame)













最初にアライメントといって、スタックするための基準点について設定します。
基本的には、特に設定しなくても初期値で問題ないと思われます。
ただし基準点の間隔や位置を任意に設定する事も可能です。

ここでは、初期値の状態で処理を進めることとして「Set Alignpoints」をクリックしてスタックの基準となるポイント数のみを設定します。
クリックすると、Number of Alignpointsに、ポイント数が表示されるので、推奨値でも良いのですが、処理時間を短縮するために、300ポイントあたりにスライドバーを調整して設定ます。
ポイント数が多くなるとPCの処理の負担、処理時間がかかります。画像の複雑さなどに配慮して決定すると良いでしょう。













アライメントポイント数を確定したら、「Align」をクリックします。
今回の処理では、Best Framesを200に設定します。
※撮影画像が安定していると判断できれば、採用フレーム数を増やせば、画質が向上する可能背があります。
※採用フレーム数を固定するのではなく、パーセンテージで決めることもできます。
データ処理が始まります。画像データを読み込みながら、採用データの判定、位置のずれなどの処理が自動で行われます。













アライメントが終了すると、スタック予定数が下段に表示されます。(200/753)













「Limit」をクリックすると下図のような位置合わせ結果を示す表示が重なって表示されます。
また、下段には、スタック後の画質を決定すると思われる「Low quality」が表示されます。
おそらくですが、この数字が低いほうが良い結果であると思っています。













「Stack」をクリックしてスタック処理を開始します。
下部に進行グラフが表示されます。100%で終了です。













処理が終了すると、処理後の画像が表示されます。全体を確認したいときは、「Show Full Image」にチェックを入れます。










 

この段階で画像データを保存することも可能です。その場合は、「Save image」をクリックして任意形式にて保存してください。













RegiStax6の強力な機能は、ここからです。「Wavelet」をクリックして、強力な画像処理モードへ移行します。














Waveletパネルにあるオプション、パラメータを設定します。ここでは、Waveletschemeについては、Linear、Initial Layerは1、Step Incrementは2、Wavelet Filterは、Gaussianとします。
Layer1のSharpenを0.15、Layer2のSharpenを0.12とします。













そして、驚くのはここからです。
Layer1のスライダーをPreviewの値が30.0になるまでずらします。
月面の詳細な地形が浮かび上がります。
Layer2のスライダーについてもPreviewの値が1.1になるまでずらします。
この係数の与えたかなどの処理は、対象画像によって異なった調整が必要ですし、経験の積み重ねが必要になると思います。













右手にあるContrast/Brightnessパネルでコントラスト/輝度調整が行えます。
ただこの部分については、一旦保存をおこなって、Photoshop等で行っても良いでしょう。













RegiStaxでスタックされた画像は、周囲にスタック痕跡がついたままになっています。

Photoshp等で、周囲の無効としたいピクセル数を確認して、キャンパスサイズを調整します。













最後に画像の向き、タイトル等を処理して終了です。













Photoshopで、処理された画像を拡大して確認してみましょう。
望遠鏡を覗いて観測しているような詳細な画像が出来上がりました。














<ホームに戻る>