メシエ天体コレクションについて

~古の宇宙から届く光の贈り物~

「Messier catalog メシエ天体コレクション」は、フランスの天文学者「シャルル・メシエ」さんが1774年から1784年にかけて発行した「メシエカタログ」に基づく天体を私が福井県内にて主に2017年に撮影したオリジナル写真集です。
メシエカタログは、彗星捜索者であったシャルル・メシエさんが彗星と見間違いやすい星の集まりらを位置情報や見え方などをまとめたものです。
これらの天体は、肉眼でも存在がわかるものもありますが、ほとんどは双眼鏡や望遠鏡を使わなければ見ることはできません。中には遥か6500万光年の距離から放たれた星の光もあり、壮大な宇宙の大きさを感じとることができます。また形状も様々で、渦巻銀河、散光星雲、球状星団、散開星団、惑星状星雲などがあり個性的で見応えのある天体も多く存在します。これらの天体は、高感度撮影が可能となった最近のデジタルカメラを用いれば趣味として撮影できるようになってきました。この写真集をご覧になって興味を持たれましたら、是非ご自身でも観望や撮影を試みて楽しんで頂きたいです。
この写真集の特徴として、各天体の見かけの大きさを比較できるように、付近の星図を差し込み、星図上にその天体を撮影した写野を赤枠で記しています。すべて等倍率で撮影していますので、各天体の見かけの大きさの比較が可能です。星図は滝敏美様が作成された「滝星図8.5」を利用させていただきました。
未確認天体を含む110個の天体は、日本からすべて観測することが可能です。メシエ天体は1年周期で廻る四季の星座の中に散りばめられています。
あなたも1年間、古からの光の贈り物を楽しんでください。
星に興味を持たれたあなたの一助になれば幸いです。

巻頭の表中のデータもこの星図に付属する一覧表から引用させていただきました。撮影後、目標天体かどうかの判定や天球上の向きの確認なども星図を見比べて確認しました。天体観測をする際には、このすばらしい星図を活用することをお勧めします。

滝敏美様のホームページ・・・・     http://www.takitoshimi.shop/atlas_85/atlas_85_jp.htm

私は、小学校高学年の頃に見た「宇宙図鑑」に心を奪われて星を眺めることが好きになりました。中学に入る頃になると、天文雑誌に掲載されるアマチュア天文家の写真をみて天体写真にも興味を持つようになりました。親におねだりをして中途半端にカメラやレンズを手に入れましたが、使いこなす技量はありませんでした。時を経て、カメラがフィルムからデジタルへと変化しました。2016年春に再び挑戦しようと高感度撮影が可能なデジタルカメラを購入しました。最初は、市街地にある自宅屋上で月や惑星、M13などの大きな球状星団などを撮影していました。機器の調整や基本操作を習得した段階で今回のコレクションの大部分を撮影してる六呂師高原へ遠征撮影に行くことにしました。天体写真の優劣は、機材や、技量はもちろんですが、何よりも大気の透明度が一番重要な要素です。この写真集は、福井県の六呂師高原がその優秀さを証明していると思っています。さて、写真集を作るきっかけをお話しします。この六呂師高原で天体好きなら誰もが憧れる「おとめ座銀河団」を撮影することができたことです。2017年1月です。アンドロメダ銀河やオリオン大星雲などは十分光量もあり比較的容易に撮影に飽きが来た私は、別の撮影対象を模索していました。そこで、検討対象に考えたのが「おとめ座銀河団」です。しかし「おとめ座銀河団」となると、「小さい」、「暗い」、「難しい」というイメージをずっと持っていて、自分の力量では撮影できないと思っていました。しかし「おとめ座銀河団」には、数多くのメシエ天体が含まれていますし、何事も挑戦と思い、2017年1月、区切り良い番号のメシエ天体M100を撮影してみることにしてみました。結果には驚きました。なんと「おとめ座銀河団」の一部が自分の予想を超える画質で見事に写し出されていたのです。頭に乗った私は「この小さくて暗い部分が撮れたんだから、メシエ天体すべてを撮影できるんじゃないか」と思い上がり子供の頃からの夢、メシエ天体コレクションの挑戦が始まりました。途中、月と天気の巡りに悩まされ、冬場の寒さや積雪も大変でしたが、次々に捉えたメシエ天体の姿には興奮の連続であっという間の一年でした。実際に自分自身でメシエ天体を撮影してみて感じたことですが、よくもメシエさんたちは16世紀にこれらの天体を発見できたものだと驚きます。今は、暗い天体も写せばその場で画像が確認できるデジタルカメラとパソコンが使えますが、18世紀当時は、今ほど性能が良くない望遠鏡と自分の目だけが頼りの訳です。街明かりなどの人工光害は僅かであった思いますが、そのご苦労は計り知れません。自分が大変幸せな時代に生きていると感ぜずにはおられません。

<機材と撮影ルール>
 このコレクションの撮影には、高橋製作所製MT160型反射望遠鏡とニコン製D7200型デジタルカメラを使用しました。
MT160は、主鏡口径160mm焦点距離1000mmのニュートン式反射望遠鏡です。短焦点化補正レンズとしてレデューサを使用しています。(合成焦点距離は、776mmです。)

このコレクションの撮影に際し二つのルールを設けました。
一つ目は、すべて焦点距離776mmの固定倍率で行いました。それは、焦点距離を固定とすることで見ていただく方に各天体の見かけの大きさを比較いただくためです。他の文献には、視直径などが書かれていますが、私も各天体の大きさはイマイチつかめていませんでした。比較的に見易いオリオン大星雲などと比較してどのくらいの大きさに見えるのかがわかって楽しさが増しました。でもその為画角に対して小さくなってしまった天体もありますし、我々が住むお隣の銀河M31アンドロメダ大星雲は画角からはみ出してしまいました。
二つ目は、方角についてです。写真上部の延長線上に「北極点」があります。天体写真は、この向きで撮影するというのが一般的なようです。
現在のメシエカタログには、M1からM110までありますが、シャルル・メシエさん自身が登録したものはM103までで、その以降は、後の天文学者が登録を行ったとのことです。メシエ天体の中には「失われた天体」として、不確かな天体が含まれており、当初私のメシエ天体コレクションには、「M102」を含めていませんでしたが、2018年に追加撮影を行いコレクションに加えました。
※「M102」は、Revision2(2018)にて追加しました。

2019年夏

<戻る>